梨雲 2010年6月号 no.110 2/2

        短 詩


      曄歌  四首           東京都 田村星舟

  恵風微。氣分高漲,回草堤。

  花發期。卒業証書,墨淋漓。

  有詩朋。啜茗閑話,恣餘生。

  山遠近。春風吹衣,天際歸。

      俳句與曄歌            東京都 田村星舟

  蝸牛ちちははの井戸涸れにけり
  已干涸。父母古井,蝸牛爬。


       曄歌・六 首          東京都 石塚梨雲

  牡丹紅。和気百香,笑語同。

  牡丹白。春愁一片,仰蒼穹。

  花色開。塵外清遊,気悠哉。

  百花香。青眼高歌,希望長。

  酒一杯。詩人満座,笑談催。

  筆如龍。一巻詩書,興更濃。

-14-

     曄歌・五 首           千葉県 高橋香雪
    (松、竹、梅、菊、牡丹)

  門外松,青境無塵,日没鐘。

  竹窓前,一宵詩酒,月嬋娟。

  一枝梅,馬語喈喈,古香台。

  菊花黄,淵名勧酒,又重陽。

  紅粉姿,牡丹競美,寄相思。


      瀛歌・二 首          千葉県 高橋香雪

  万枝花。紅雲香雪,亦繁華。煌煌電飾,何処酒家。

  看花遊。漾漾桜雲,酒味柔。駅頭春去,一片詩愁。


      曄歌・二 首          埼玉県 芋川冬扇

向艶陽。枯木重栄,浴仏光。

   酒一樽。月落歌残,任君呑。

      坤歌・二 首          埼玉県 芋川冬扇

   老妻夫。退去雛孫,一言無。

   老人酒。青年失業、叫痩狗。

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      曄歌・偶 成          東京都 石倉鮟鱇

  夜光深。誰彈千里,馬頭琴。

      偲歌・逆坂走丸         東京都 石倉鮟鱇

  花容笑看,詩人扼腕。逆坂走丸,佯鐡漢。

      六言俳句・二 首        東京都 石倉鮟鱇

  春,堆肥蚯蚓,新。   春なれば堆肥に蚯蚓新たなり

  唇,調脂弄粉,春。   唇や化粧に凝れば春である


      七言俳句・八 首        東京都 石倉鮟鱇

  武士有時吟漢詩。   さむらひは時に漢詩を吟じけり

  櫻雲盛涌流霞洞。   櫻雲の盛んに涌けり流霞洞

  肉山酒海夢生財。   肉山と酒海や夢に財をなし

  舐皮論骨得官祿。   皮を舐め骨を論ずる官の祿

  玉走金飛人老悲。   玉が走り金が飛びゆき人が老ゆ

  豹死留皮人痩妻。   豹死んで皮をのこせり人は妻

  花痩緑肥蒙墓碑。   花は痩せ緑が肥えて蔽う墓碑

  吞舟漏罔大魚長。   舟を呑み網から漏れて大魚長ず

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      四七令與短歌          東京都 石倉鮟鱇

  孀婦花魂,風韵猶存抱酒樽。
  孀婦の花の魂に風韵のなお存すれば酒樽を抱けり

  風卷殘雲,人散櫻林花痩春。
  風が残雲を巻くごとく人散じ櫻の林に花痩せる春

  駕鶴成仙,風輕雲淡耀西天。
  鶴に駕し仙と成るなり風軽く雲淡くして耀く西天

  白雪陽春,到處俳人得句新。
  陽春に白雪降れば到るところ俳人は得ん新しき句を

  人羨海鴎,逆水行舟万里秋。
  羨ましきはかもめかな水に逆らい棹を鼓す秋の行舟

  歸奇顧怪,詩人各各誇情態。
  歸庄は奇 顧炎武は怪 詩人らはおのおの誇る情態

      五七令與短歌          東京都 石倉鮟鱇

  鮟鱇吐珠唾,悦目詩中櫻萬朶。
  鮟鱇は珠唾を吐くなり詩中には目を悦ばして万朶の櫻

  朱顏挂酒旗,風馳草靡醉猿啼。
  酒旗をかかげて朱顏あり風は馳せ草は靡いて醉猿が啼く

  青年敬白首,談笑封侯斟美酒。
  青年が敬う白首 談笑で侯になられて美酒を斟みをる

  俳人得句餘,鶯聲燕語遍花虚。
  俳人が句を得たのちは鴬と燕が歌い花虚にあまねし

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(承前)

  棄舊憐新,天下詩人賞花春。
  旧きを棄て新たなるをば憐れまん天下の詩人桜蔭の春

  談笑風生,雅会歌人飛美聲。
  談笑すれば風が生じてみやびなり歌人が飛す美しき声

  月夜帶春情,談吐風生韻致清。
  月の夜は春情を帯び談吐せば風が生じて韻致清らか

  孤老寒灯下,涕泪交加洗春畫。
  寒灯のもとに孤老の鼻水は涙とともに春画を洗う

  情書奈無力,涕泪交集混雲液。
  いかんせん情書は無力―鼻水は涙とともに酒に混ざらん

  花容此皺眉,涕泪交埀悶酒杯。
  眉に皺をよせて花のかんばせの涕泪垂るるやけ酒の杯

  鏡中白髪叟,涕泪交流獨感舊。
  鏡中に叟は白髪―鼻水となみだ流れてひとり感旧

  別恨伴春情,涕泪交零感鳥聲。
  別恨に春情そはば鼻水となみだこもごも鳥声に感ず

  萬應靈丹盈玉盞,人似猿朱臉。
  万能の靈薬玉の杯に満ち人は似るなり猿の赤ら顔

  老學詩韵清,負氣含靈飛美聲。
  晩学に詩韵は清し気を負えば靈を含んで飛びゆく美声

  陋巷隱居人,求志十年知赤貧。
  志を求めし人の陋巷に隱居十年赤貧を知る
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  人能陪酒興,見景生情附鳴鳳。
  人のよく酒興に陪し景を見ん情生ずれば鳴鳳に附す

  奮死不屈服,灰身粉骨入魔窟。
  奮死するも屈服せず身を灰に骨を粉にし魔窟に入らん。

  俳人中酒毒,金丹換骨句脱俗。
  俳人があたる酒毒や金丹に骨を換えられ句は俗を脱す

  花貌抹紅唇,玉骨氷肌解肇春。
  紅を引く花のかんばせ玉骨の氷の肌の解けゆく肇春

  天下有風騷,人競情操吟句豪。
  天が下風騷あらば情操に人ら競はむ吟句の豪を

  春夜擅風情,称雨道晴言不精。
  春の夜に風情をなん擅せば,称雨道晴 言は精ならず

  春晝有幽情,花遮柳隱人孤影。
   春の昼に幽情あり人影を花が遮り柳が隠す

  才媛詠青春,柳聖花神搖絳唇。
  才媛が詠む青春や揺らすのは柳聖花神のあかき唇

  天下久平康。山中宰相滿頭霜。
  天がした平康にして久しければ山中の宰相に滿頭の霜

  蠧魚生緑羽,遺迹談虚飛綺語。
  緑の羽を生じて蠧魚は跡付けのなき虚談に綺語を飛ばしけり

  八哥誑散官,泛泛而談説宝山。
  散官が九官鳥に誑かされ泛泛と談じ宝山を説く

-19-
 (承前)

  美酒洗詩豪,胡説乱道羽人巣。
  うまき酒の詩豪を洗はば胡説あり道を乱さむ羽人らの巣に

  裁賦缺才藻,賊頭鼠腦偸輕宝。
  才藻を賦を裁するに欠くなれば賊頭鼠腦 軽宝を偸む

  樗散傾金盞,賊眉鼠眼偸康健。
  金盞を樗散傾け賊の眉 鼠の眼で偸む健康。

  人裝做詩豪,蠅聲蛙躁唱歌高。
  ある人が詩豪のふりをするならば蝿声蛙躁 唱歌して高し

  風人吟袖飄,蠅頭蝸角聳肩高。
  風人が吟じて袖はひるがえり蠅頭蝸角に肩は聳えん

  昂頭在天外,古来詩客多無頼。
  天外に頭をあげて詩人らは古来おおいに無頼となれり

  住民皆老去,蠅飛蟻聚吟俳句。
  住民のみな老い去らば蠅が飛び蟻集うごと俳句を吟ず

  散官爲酒仙,夏爐冬扇亦詩箋。
  散官が酒仙となりぬ夏の爐の冬の扇のまた詩箋のごと

  吟客聳肩高,舌敝唇焦俳句豪。
  吟客の肩は聳えり舌やぶれ唇焦げて俳句豪なり

  激論轉瘋狂,舌劍唇槍手酒觴。
  激論しうたた瘋狂,舌は劍唇は槍手には酒觴。 

  閑官力戰多,舌鋒如火降詩魔。
  閑官に力戦多し舌鋒は火のごとくして詩魔を降す。

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by kanshiriun | 2012-11-18 14:47 | 2010年6月号
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