梨雲 2010年8月号 no.111 2/2

          短 詩


      曄歌・三首 泊泉館       千葉県 高橋香雪

  友情親。一夕交歓,喜色新。

  夜気清。江上暗蛍,滅又明。

      曄歌・三首           千葉県 高橋香雪

  立橋頭。清爽白蓮,水悠悠。

  櫓声鳴。舟遊一刻,江上行。

  緑陰中。禅寺幽庭,数点紅。


      曄歌・恋雨 三首        神奈川県 萩原艸禾

  夕陽催。旱雲忘雨,空遠雷。

  瘠胡瓜,恨乾旱留。莫自羞。

  炎日長。撒水一庭,風僅涼。


      曄歌・三 首          東京都 田村星舟

  啜茗時。窓前點點,柚花開。

  湖水明。翠柳垂垂,朝露生。

  月團團。盛暑天心,俗氛洗。

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      俳句與曄歌           東京都 田村星舟

  誰が畑穫りのこされし蕃茄真赤
  誰田地。収剩蕃茄,一鮮紅。


      七字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  玉走金飛人老悲。        玉が走り金が飛びゆき人が老ゆ

  銀蟾憐憫客中枕。        銀蟾に憐憫されて旅枕

  睹景傷情句寫生。        景を見て情を傷めし句は写生

      八字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  碑,補過飾非辭藻黴。      碑や過ち飾る美辞に黴

      十字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  詩魂張翼向台灣,月明天。    台灣へ詩魂飛びゆく月の中。

      十字押韻短歌          東京都 石倉鮟鱇

  貧病交侵賣月琴,雨洗襟。
  貧しさと病にこもごも侵されて雨に洗われ月琴を売る

      十一字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  卵覆鳥飛,樽倒酒流空玉杯。
  卵ころげて鳥は飛び樽倒れれば酒流れ空しき玉杯

  忙裡偸閑,大椿緑蔭暫吸烟。
  忙中に閑を偸んで大椿の緑陰に吸う暫時の煙草

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      十二字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  民意是如何,泥船一億渡山河
  民意とはいかなるものぞ泥船の一億が渡る山と河と

  足球相破竹,龍騰虎蹴共馳突。
  サッカーはたがいに破竹 龍は騰り虎は蹴ってともに馳突す

  人老但傷悲,玉走金飛留酒杯。
  人老いてただに傷悲す玉が走り金が飛びゆき酒杯が残る

  無慾有琴書,千辛萬苦晩年枯。
  慾がなく琴書があれば千辛も萬苦も枯れる晩年である

  銀蟾憐蠧魚,閉門覓句老山居。
  銀蟾が憐れむ蠧魚は門を閉じ句をばもとめて老いゆく山居

  山人迂世情,霞友雲朋遶草亭。
  山人は世情にうとく霞友あり雲朋ありて草亭を遶る

  詩叟通聲律,錦嚢佳句如珠玉。
  声律に通じし詩叟の錦囊に佳句は珠玉のごとくなりけり

  人繙歳時記,尋章摘句補才藝。
  歳時記をひもとく人や章を尋ね句を摘み才と藝を補う

  歸途逢酒魔,忙中有錯醉呶多。
  帰り道に酒魔に逢う忙中にとかく失敗ありて酔呶多し

  王孫無酒錢,游手偸閑詩有權。
  王孫に酒銭なくとも手は遊び閑を偸めば詩には権あり

  詩人把酒杯,健歩如飛而忘歸。
  杯をつかんで詩人の健歩すれば飛ぶがごとくに帰るを忘れ

  人嘆仰蒼穹,貧病交攻詩未工。
  蒼穹を仰いで嘆かん貧と病にこもごも攻められ詩は工ならずと。 

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(承前)

  風人賣月琴,貧病交侵涙洗襟。
  月琴を風人売れり貧と病にこもごも侵され涙襟を洗う

  俳人易忘歸,健歩如飛追落暉。
  俳人は帰るを忘れ易きかな健歩飛ぶごと落暉を追へり

  詩客老猶求,酒病花愁吟不休。
  老いてなお詩客は求む酒に病み花に愁いて吟じ休まず

  酒店兩遺賢,同病相憐醉語酸。
  遺賢あり酒店に病を同じくしあい憐れんで醉語酸たり

  花唇擅美言,敬老尊賢隣酒仙。
  花唇ありほしいままに美言して敬老尊賢 酒仙の隣

  才媛絳唇談:古聖先賢多美男。
  才媛の絳き唇談ずるに古聖先賢美男多しと

  詩客愛飛聲,多愁善病殉神情。
  詩に声を飛ばすを愛し愁多く病みてはよく神情に殉ず

  詩人説勝游,酒病花愁害不休。
  勝遊を詩人は説けり酒に病み花に愁へば害休まずと。

  酵母養俳人,無病呻吟老水村。
  酵母やしなう俳人は呻吟に病なくして水村に老ゆ

  京城有九衡,變動不居爲癈墟。
  京城に九衡あるも休みなき変化についに廃墟となれり

  酒虎化花猫,變俗易教講詩騷。
  三毛猫となりし酒虎あり俗を変へ教へを易へて詩騷を講ず

  美酒盡空觴,變幻無常覺感傷。
  美酒尽きて杯は空 変幻の無常を覚え感を傷めり

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(承前)

  英賢斷病根,厭舊憐新勤子民。
  英賢は病根を断て旧を厭ひ新を憐れみ勤しめ子民

  吟詩似午鷄,烟霞痼疾使人迷。
  詩を吟じ午鶏に似たり人をして迷はしめたり烟霞の痼疾

  白頭擅酒杯。談是説非朱臉輝。
  杯をほしいままにし白頭は紅い顔して閑話に興ず

  千年雨洗碑,補過飾非辭藻黴。
  千年の雨が洗へる碑の補過飾非の辞藻の黴よ

  花言酒店飛,口是心非人巧陪。
  酒店では心は非でも口は是と花言を飛ばし陪して巧み

  商人作蠧魚,千言萬語澱泥淤。
  商人も蠧魚となるべし淤泥となり千言萬語の澱みに在らば

  讀書聽緑雨,千言萬語堪悦豫。
  書を読むに緑に降れる雨を聴けば千言萬語悦ぶに堪ふ

  美禄洗詩魂,千愁萬恨酒家屯。
  美禄あり詩の魂を洗ふゆえ千愁萬恨 酒家にたむろす

  詩魔變幻才,千姿萬態作題材。
  変幻の才ある詩魔に千姿あり萬態ありて題材となる

      十三字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  老板収拾玉杯,水盡鵞飛酒客歸。
  玉杯を亭主は片す水尽きて鵞鳥飛びゆき酒客ら帰る

  詩魔贊美拙吟,有口無心彈竪琴。
  拙吟を詩魔は贊美し口あるも心なきかに竪琴を弾く

-16-

         葛飾吟社 退会の辞

                          中山逍雀


 私は予てより、漢詩詞活動を25年65歳までと決めていた。そのときになったら辞めようと思っていたが、愚図愚図してしまい、現在既に30年70歳で有る。
 私は3月生まれだから、2月なら30年70歳で有る。来月になると、71歳に成ってしまうので、意を決し無理突飛を言って、2月限りで、葛飾吟社を脱会した。

 今はとても気分がよい。気分爽快である。

 ただ予定より5年遅れてしまい、漢詩詞の次に、何かを為そうと思っているが、時間が短くなったことには悔いが残る。

 まずは身辺整理に着手しなければ成るまい。

 財物も未整理があるので、整理に着手する。

 漢詩詞講座の改訂版の上梓が有る。
 新版も執筆しなければ成るまい。

 中国の詩友全員に挨拶状を出して、今后とも葛飾吟社後継諸兄との友誼を頼んでおこう。
 
 それが片付いたら、もう一つ何かを手がけよう!

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 散歩途中の近所に、数人の漢詩詞好きな御仁が居る。散歩の途中だから暫くは漢詩詞のお付き合いを為そうと思っている。

 ただ曄歌は根付くまで100年を要する事業だから、息の続く限り続ける積もりである。

 葛飾吟社会員諸賢は、日本国内の漢詩詞環境に安堵し慢心して、国際評価させる努力を怠ることがないように、心懸けて戴きたい。
 日本国内漢詩壇で評価されても、中華詩詞壇では評価されるとは限らないことを知らねばならない。

 多くの中国人は、余程気心が知れた相手でなければ、作品に対して巧拙を問はず必ず褒めて、真の評価を為すことはしない。
 此で褒められたと勘違いする日本人が実に多いのである。諸君はこの現実を辨えなければならない。

 中華詩詞壇で評価されなければ、如何に国内評価があっても、国際的見地からその価値は無いに等しい。
 諸君が道筋さえ通せば、中国の多くの詩詞壇で、諸君を受け入れてくれる。
 その様な環境は既に私が作ってあるので、諸君の努力がその正否を決める。

 漢詩詞愛好者各位の御健吟を祈る。

   平成22年2月
                      中山逍雀 頓首 

追伸(平成22年7月)
  旧作が漢詩詞作品コンクールにおいて銀賞を獲得しました。

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     慶祝香港回帰栄誉賞銀賞を受賞して
                           中山逍雀


 表彰した団体が私の全く知らぬ処なので10年経ってやっと受賞者の手元に届けられました。

 何処をどう回ってきたのか?13年目に香港回帰の漢詩作品銀賞受賞の表彰状が届いた。

 黒龍江省の詩友、唐鳳寛先生が、私用で日本に来た。そのついでに持参してくれた。
 「此は中山さんの賞状では有りませんか?」

 私は投稿した覚えもないし(余りに古いことで記憶にありません)、ましてや展示会開催の事実も知らない。ただ中国の詩詞壇では、展示に値する作品を目すると、主催者が展示に参加させるようである。
 私の知らぬ間に、作品コンクールに参加していたことは珍しい事ではないが、13年も彷徨っていた銀賞は初めてだ!

 漢詩詞の創作指導をしていて、自分の創作能力が如何ほどか?・・・・此は指導者として何時も気に掛けていることである。
 私の場合は、作品が先方の機関誌に掲載されることを作品評価の第一段階の証としていた。
 余程下手でない限りは数量の都合はあるが、殆ど掲載される。
 義理で載せる場合が多いので、載せられたから巧いとは限らない。

 その次に、機関誌の中で、佳作選に載せられることである。
 選び出されたと言う事実は、中国人の作品と比較されて、遜色ないから載せられた!と思って差し支え有るまい。
 毎月投稿しているわけではないので、割合は解らないが、時折に佳作選に載ることはある。

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 その次に、佳作評論の対象に成ることである。
 30年の歳月で、十数度はある。

 此までは、投稿した機関誌内だけのことである。

 次に投稿した覚えのない機関誌に掲載されることである。
 機関誌の編集者が他の機関誌に掲載されていた作品を見て、参考作品として取り入れる場合である。
 見覚えのない機関誌が送られてくることは、年に数度はある。
 中国では他人の作品を掲載すると、著作料の代わりに、掲載誌を一冊送ってくる習慣である。
 日本のように、掲載料を取ることはしない。
 中国には地方紙や専門紙がとても多い。依って詩詞聯の専門紙には、機関誌から抽出されて載ることはある。

 次にコンクールの選で、選に入って○○賞を獲得することである。
 等級段階は日本と同じで、金 銀 ・・・・と選ばれる。
 投稿するのに、日本では参加費用が必要だが、中国では必要ないようだ!
 掲載誌の代金と郵送料を必要とする場合はある

 私の場合は寄稿要請の案内を見て、投稿した記憶があり、数度は○○賞を受賞したことはある。
 応募総数が数百通で、当然のことだが、全員が中国人で、各自練りに練った作品を投稿してくるのだから、入選して、○○賞を獲得することでも、至難のことである。

 今回は、投稿した記憶もないのに、銀賞とは、自分の実力が認められたと、嬉しい限りである。
 ただこの作品は、知らない機関誌に載ることや、地方新聞や専門紙に載ることも幾度かあって、中国国内でそれなりに評価されていたことは事実である。


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by kanshiriun | 2012-11-18 14:56 | 2010年8月号
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